映画「皇帝のいない八月」(1978)の感想。

小林久三原作、山本薩夫監督。自衛隊による軍事クーデターを題材にした社会派サスペンス作品。

この映画を観るのは3,4回目になる。緊迫感あふれるストーリーで何度見ても飽きない昭和の大作だ。豪華キャストに目を奪われる。

終盤の少し前まではどんどん引き込まれる展開だ。単にクーデター事件だけでなく、政府内での保守と革新の対立、極右というべき自衛隊の過激分子、日本の政治へのアメリカの意向なども描写されていて、重厚な構成になっている。

難を言えば、クーデターが頓挫してから解決までが少し雑かな。政界のドンの佐分利信の行き当たりばったり的な事件への関与と最期は拍子抜け。クライマックスは派手なアクション映画になってしまった。それから吉永小百合と太地喜和子は、耐える女性と黒幕の女というだけで、それ以上の役割を与えられなかったことも残念。

だが、三國連太郎、高橋悦史、渡瀬恒彦、山本圭の濃いラインは鉄壁で、全体的に話がしまっている。場面が変わっても、この中の誰かが登場していて、当時の俳優の力量を改めて感じる。とくに、三國連太郎は、父親として、組織人として、元憲兵としての顔を使い分け、主役と言ってもいいくらいの役割だ。