映画「仁義なき戦い」(1973)の感想。深作欣二監督の名作。

深作欣二監督によるヤクザ映画の名作。

登場するのは、とにかくアクの強いヤクザたち。義理人情に厚い従来型の極道は、菅原文太演じる広能と梅宮辰夫の若杉くらい。見栄と欲、そして自己保身が交差するリアルな現実社会だ。

菅原文太、梅宮辰夫、松方弘樹、伊吹吾郎、渡瀬恒彦の主なキャストが、迫力満点の演技で画面から飛び出てくるようだ。残念なことに、抗争が激化して彼らは次々に殺されていく。惜しいな。残ったのは広能ひとりだ。最後の場面は、むなしさ以外に何も残らない。哲学など語らなくても、虚無感をこれだけ出せるのがこの映画のすごいところだ。

最重要人物は金子信雄の山守組長。この無法地帯をまねいた張本人でもあり、彼がいなければこの映画は成り立たない。人として極道としてどうしようもないヤツだが、作品にリアル感を持たせるためにはなくてはならない存在だ。

こういう作りの映画はあたりまえになったので、最初に観たときほどの衝撃はないが、極道映画の古典的名作であることに間違いはない。面白い。