映画「未知への飛行」(1964)の感想。核戦争の危機。

シドニー・ルメット監督、ヘンリー・フォンダ主演。

水素爆弾を搭載した米空軍機が、司令部からモスクワ爆撃の指令を受ける。その命令は機械の故障による間違ったものであった。事の重大さに気づいた司令部は大慌てとなり、大統領自ら中止命令を発信する事態になる。しかし偽情報防御のための数々の手順があだとなり、パイロットに伝達することができない。クレムリンとも連絡をとり回避策を模索するが、爆撃機は刻一刻とモスクワに近づいていた。

核軍拡競争に警鐘を鳴らす映画ではあるが、メッセージ性一辺倒ではなく、寧ろスリリングな軍事サスペンスとして、大変よくできた作品に仕上がっている。ほとんどの映像は司令部と大統領が詰める密室が舞台ではあるが、安っぽさは感じられない。刻々と迫りくる破滅への瞬間をむかえつつある司令部の緊迫感はハンパない。とくに大統領を演じるヘンリー・フォンダが、ホットラインでクレムリンと交渉する迫真の演技は、手に汗握るような臨場感がある。

あまり知られていない作品だが、傑作と言えるシリアス軍事サスペンス。