映画「秋津温泉」(1962)の感想。岡田茉莉子を見るための作品。

1962年製作の松竹映画。岡田茉莉子出演、吉田喜重監督。

戦時中、生きる気力をなくした青年河本は、秋津温泉を訪れる。そこで胸の病で倒れ、女将の娘新子の介護により元気を取り戻す。二人は互いにひかれあうが、河本は別の女性と結婚してしまう。数年後、再び秋津を訪れた彼は、女将となった新子と再会する。

岡田茉莉子のデビューから100本記念としてつくられた作品。そのとおりに、岡田茉莉子を見るための映画になっている。

娘時代から女将となって旅館を切り盛りするまでの、女性としての様々な表情を、岡田茉莉子が演じ分ける。若い時代は、泣いたり笑ったりと、飛び跳ねるような躍動感を見せる。そして大人になってからは、気丈であるが不安定でもある女性の複雑な心情をうまく表現している。

全編にわたって、昭和30年代の温泉町ののどかな四季の風景をふんだんに見ることができる。そして岡田茉莉子の美しさが、その自然の中で際立つ。

ストーリーとしてはただのメロドラマだが、女優岡田茉莉子を見るためには最高の映画だ。