黒田龍之助著「ロシア語だけの青春」の感想。

NHKのロシア語講座でお馴染みの黒田龍之助先生による青春記。

高校時代にロシア語を学び始めた著者は、「ミール・ロシア語研究所」というロシア語学校に通い始める。後に振り返れば、この選択は大正解だったわけだが、正統派の語学学校だけあって、厳しい指導についていくのに四苦八苦する。

東夫妻の語学教育への信念が基盤となっている講義はスパルタ方式。身になるだろうが受講生にとってはかなり大変そう。一方で、多彩なバックグラウンドを持つ同級生たち。自らロシア語を学ぼうと集まっただけあって、個性的な人が多い。ユーモラスに描かれる彼らとの交流は読んでいて楽しい。

まるで自分はポンコツ生徒だったのような語り口だが、実際はあっという間に通訳のアルバイトをこなせるくらいに上達する著者。他の生徒たちも皆さん優秀で、ロシア語を使いそれぞれの分野で活躍する人材になっている。NHK講座の講師をつとめられた貝澤哉氏が学友だったのには驚いた。さすがにミール。

青春期に何かに打ち込むというのはよくある話。しかし、英語以外の外国語を選んで、それがロシア語というにはかなり珍しい。楽しい青春記として読むことができると同時に、著者の語学愛を至るところに感じることができる。語学学習のヒントも散りばめられていて、おすすめの一冊。