石原慎太郎と編集者による対談集。石原氏が文壇と政界の昔話、裏話を滑らかに語る。
昔はよかった式の文壇回顧録なのだが、内緒話のようなものも多く楽しめる。下世話なエピソードとも言えるようなところもあり、川端康成、小林秀雄、三島由紀夫、大江健三郎のようなビッグネームと直接つきあいのあった著者による数々の逸話は貴重な証言だ。
とくに小林秀雄の迫力と三島由紀夫の繊細さに関わる話は、世にあまりでてこない人物像として人間臭さを感じる。よほどそりが合わなかったのか、吉行淳之介や美濃部亮吉は容赦なくこきおろされている。
政治家にふれた部分もあり、田中角栄が小林秀雄に叱られたエピソードは面白い。
昭和の文壇交遊録として興味深い本。