ドメニコ・ラガナ著「日本語とわたし」の感想。

昭和50年発行の古い本。著者はイタリア生まれのアルゼンチン人。日本語の研究者というわけではないが、独学で身につけた日本語を使って日本語で文筆活動を行っていた。

とにかく本書を読んだだけで驚いてしまう。これは翻訳本ではなく、著者自身によって書かれているからだ。これが外国人が書いた文章なのかと、信じられないくらいの日本語力だ。

著者の学習歴が断片的に出てくる。小説の読み書きが主で、評論雑誌なども購読して、日本人に個人授業も受けている。その中での一番のもとになっていたのは、小説を徹底的に読みこんで、そこで覚えた表現を使って文章を書いていたことにあるようだ。

外国語学習法に参考にと手に取った本だが、著者の関心は日本語学習を超えて日本語そのものになっている。日本語は曖昧なことばだといった通説に対しても反対意見を述べている。なかなか説得力のある考えだ。「そんなことを言えるのは、日本語をまだよくわかっていないからだよ。」とは日本人からでも言えないからだ。だからこそ著者の考察は興味深い。