
クイーンの国名シリーズの中でも屈指の一冊。だいぶ前に読んでいるが、かなり時間をおいての再読になる。やはり面白い。
十字架にはりつけにされた首のない遺体から始まる連続殺人事件。なんとも不気味でホラー作品のような雰囲気につつまれた序盤選だ。その後、謎の兄弟たちの出自から事件の背景は東ヨーロッパにまで飛ぶ。大西洋を越えるスケールとなり、事件に異文化の怖さまで反映してくる。そして野放しになっている殺人鬼が魔の手をのばしてくる。最後はハリウッド映画ばりの追跡劇でわくわくさせられる。
息を継がせぬ展開で、飽きさせない要素がたっぷりと詰まっている。とくに隠れた兄弟たちと殺人鬼の素性が、ストーリーを盛り上げてくれる。見所は、やはり瓶のくだり。エラリーの鋭い観察から思わぬ真実が明らかになる。さすがに名探偵の頭脳は違う。
最初から最後まで楽しめ、傑作と言われるだけあって中身の濃い作品だ。



