佐々木敦著「「書くこと」の哲学」の感想。

初心者向けの文章教室のようなものかなと思って手にとってみたが、それとはかなり違っている。書名にあるように、書くと言うことはどんなことかを哲学するように深く考察した本だ。講義録のような形式をとっていて、前半は書くことのマインドセット、後半は実際に書いてみたときに起きることが書かれている。

ただの文書伝達でなければ、自分の内面を相手に伝えようとすると困難が生じる。伝わりやすくしようとすればするほど、本当に伝えたいことと離れていく。反対に、伝えたいことをオリジナルのままに表現すると伝わらない。オリジナルのままに表現できるのかという問題もある。ジレンマだ。書くときには、そういった葛藤に向かいあうことになる。

著名作家の悪文の例が紹介されているが、読みにくくても読者には十分伝わっているし、寧ろそういう形式だからこそよく伝わっているとも言える。こういうことを言われると、気が楽になって、より自由に書けるような気がしてくる。

後半で述べられているように、やはり文章は生き物。書き始めると、予め考えていたようにはならないものだ。つまり、書きたければ書くしかないんだなと改めて思う。