人蟻とは何のことかと思うが、蟻のように砂糖に群がる人たちという意味。製糖会社の暗部に絡む殺人事件の話。
戦後の混乱期に、台湾から砂糖を不正輸入したという設定は著者らしい。裏の経済とそこで一儲けをもくろむ野心家たちの暗闘。そして業界の闇を暴こうとする探偵役の活躍だ。
ただ、少し展開面では都合のいいことばかり起こるという印象。探偵の弁護士百谷泉一郎が、いきなり路上で最重要人物に話しかけられる。出張先でその人物の行方不明事件と遭遇する。たまたま知り合った株式評論家の令嬢が切れ者で、絶好の探偵助手となる。どうも脈絡もなく必要な人物を登場させているだけに思えてくる。
それでもテンポよく捜査が進行し、ロマンス探偵の雰囲気もある。謎解きだけでなく、ストーリーとしても楽しめる作品だ。