山形浩生著「翻訳者の全技術」の感想。

新刊本を見つけたので手に取ってみた。著者は翻訳者を名乗っているが、SF、経済、コンピューター、文化など多彩な分野にわたる執筆活動を続けていて、現在は開発援助コンサルタント。今の時代の知識人といったことになるだろう。

談話集のようなかたちの本で、四方山話的にいろんな分野についての話しが展開される。かなり辛辣な批判も盛り込まれていて、酒場の与太話を聞くような感覚で読むことができる。まとまり感はないのだが、ところどころになるほどというところがあって、読んでいて面白い。

中身がないのに難解さでカモフラージュしている偽物たちには手厳しい批判を浴びせてる。橋本治の論評などは容赦ない。現場主義のような記述もあるが、カリスマ経営者が言う現場第一主義とは違い、ただ単に自分の目で見ればよくわかることもあるというくらいの話。自身をアマチュアと言うだけあって、スタンスが軽いのが著者の特徴だ。

何が本当なのかを自分の頭で考えるというのが基本路線になっていると思う。幅広い分野にわたるので、煙に巻かれるような気分になるが、今の時代の知的生産術といった内容の本だと思う。