映画「影武者」(1980)の感想。黒澤明監督作品。戦国絵巻の映像美。

武田信玄の影武者を題材とした黒澤明監督の大作。主演は仲代達矢。

武田信玄の遺言により、死後3年のあいだその死を隠すことになる。怪しい素性の盗人が影武者として選ばれる。武田の侍大将たちの指示に従い、敵味方を欺くという大役を担う。

冒頭、信玄たちの背景にある武田菱の重厚感に圧倒される。全編にわたって凝りに凝った映像の連続だ。引きのアングルでの美しい映像は掛け軸の日本画のようだ。それらが次々にあられれるため戦国絵巻を見ているかの錯覚に陥る。暗い映像を多用することで、落日の武田家の影が表現されている。

完璧な映像美だと思う。戦国時代をそのまま再現したようだ。足りないのは本物の武将たちのみ。それを裏をかくような手法で表現して見せる。

徳川家康と上杉謙信は、どうみても素人芝居だ。本物の家康と謙信を出演させたいところだが、それは無理。ベテラン俳優に演じさせては滑らかな台詞回しで台無しになる。なぜなら家康と謙信は俳優ではないからだ。そこで、素人っぽさが残る家康と謙信の影武者を用意した。素人演技で本物感を出すという逆転の発想だ。

物語は武田家滅亡が淡々と描かれるだけで、エンタテインメント性は少ない。偉大な信玄を失った武田家は、まさに信玄の影の存在。本人が亡くなれば、影もいずれは消える。その過程を影武者を描くことで表現している。

お金はかかっているし、驚くべきはエキストラの数。完璧を目指して作られた巨匠の作品。黒澤明が黒澤映画を撮ろうとするとこんな映画になるのだろう。