映画「ロープ」(1948)の感想。ヒッチコック監督の異色作。

ヒッチコック監督による異色サスペンス。舞台劇のような構成で、ほぼ全編ワンカットでつくられている。

頭脳明晰な学生2人は、自分たちの優秀さを示すために、アパートの一室で同級生を殺害してしまう。そこに被害者の父、恋人、恋敵、恩師を招いて、パーティーを催す。死体入りのチェストをテーブル代わりにして、パーティーの会話が進む。

後のヒッチコック監督作品とは少し趣が異なる。心理的な恐怖感をあおるような映像テクニックがあるわけではない。善人と悪人との対比もない。探偵役のジェームズ・スチュワートが鋭い推理を繰り広げるわけでもない。

殺人をネタにして、その動機をめぐる倫理的論争をネタにする変わった展開。登場人物の設定も、互いの関係性をハッキリと決めずに曖昧さが残る。

殺人というテーマを恐怖感に結びつけることで娯楽作品にするヒッチコック作品とは違った映画。殺人そのものを考えるためのサスペンス作品。

ジェネオン・ユニバーサル