画期的なγ(ガンマ)合金を開発した大学教授が行方不明になった。私立探偵が捜査を始めると、その秘密をめぐる産業スパイの動きが明らかになってくる。更に、企業との関係による株価の動きに群がる人々が現れ、捜査は混迷を極める。
新合金の開発者である教授の殺害犯人捜査が主軸になっているものの、謎解き一辺倒のミステリーとは少し趣きが異なる。とにかく登場人物が多種多様。欲得ずくめの世界に生きる濃い面々が次々に登場してくる。そして一癖二癖ある彼らの駆け引きは読み応えある。探偵役でさえ少し胡散臭い人物。どれがどうなっているのか追うのが大変。
犯罪のトリックがどうこうよりも、人間関係から入る犯人の推理。それが見事に決まっている感じがする。推理群像劇と言えるような展開だ。なかなかの秀作だと思う。