手嶋龍一、佐藤優両氏によるウクライナ戦争についての対談本。
今の世間の空気は、ロシアの蛮行に対する非難と全面的ウクライナ支持で一致している。ロシア側に多少なりとも配慮するようなことも言いにくい状況になっている。そういった方向で、この戦争を終わらせることができるのかという疑問も当然出てくるだろう。外交のリアリズムの点から、どうすればよいのかを二人の著者が語っている。
一番のジレンマは、ロシアを苦境に陥れると核使用の危機が高まること。西側諸国はロシアを敗北に追い込むほどに、支援を増やすことが出来ないことになる。それでも支援を続けなければウクライナがもたない。結果として、膠着状態が続き両国が疲弊していく。それがロシアの弱体化であり、これこそがアメリカの望むシナリオだという指摘は説得力がある。
そして、双方が同意するための和平のための条件の難しさ。クリミア半島がロシアにとってどれほど重要な地域か。ウクライナの3地域の持つ複雑な事情。両国が納得できるかたちで終戦に持ち込むことは、かなりの難問に見える。
ウクライナという国家も、ロシア同様に相当にダーティーな部分を持っている。戦争前のゼレンスキー大統領の過激な行動も、戦争の核心的な引き金になった可能性もあり、善悪論だけでは解決できない背景がある。