第二次世界大戦中、ナチス親衛隊のNo.2となったラインハルト・ハイドリヒを描いた作品。
ナチス高官で唯一暗殺されたとされるラインハルト・ハイドリヒ。前半はハイドリヒの出世と権力掌握を、後半はチェコのレジスタンスによる暗殺計画が描かれる。
ナチスは、なぜあれほどの残虐行為を行えたのか。その一端は、命令系統の中で実務の最高責任者となったのハイドリヒの姿を通して垣間見える気がする。
ヒトラー、ヒムラーは、思想と方向性を示すのみ。具体的な実行計画を練るのがハイドリヒだ。ヒトラーの意向に沿うべく計画を立て実行しようとすれば、何をおいても忠誠心が行動の原動力になる。そこには忖度のような感情も入ってくるだろう。それが組織内の人の心理というものだ。私生活からは、残忍な行為をするような人物には見えない。頭にあるのは、ただ組織に忠実であることのみだ。それが先鋭化すると個人の感情を乗り越える免罪符にもなってしまう。だから怖い。
レジスタンス側の活動は悲惨だ。行動を起こそうが起こすまいが、地獄のような状況が待っているだけだ。それでも彼らは反抗する道を選ぶ。
主演のジェイソン・クラークは冷酷な指揮官をうまく演じていると思う。だが、ハイドリヒ本人の写真は、言葉にできないほどに恐ろしい印象を与える。