映画「野良犬」(1949)の感想。黒澤明監督、三船敏郎主演の刑事映画。

昭和24年公開。若い頃の黒澤明監督作品。主演は三船敏郎が新米刑事を演じる。

バスの車中で拳銃をすられた自責の念と、自分の拳銃が事件に使われるのではないかという不安。それらを抱えて精神的に追いつめられながら犯人を執拗に追う若い刑事。捜査のイロハも知らない未熟さと犯人逮捕への執念が入りまじる姿は、まるで空腹を抱えながら餌をさがす野良犬のようだ。

ストーリーとしては、新米刑事が犯人を追って逮捕に至るというシンプルな構成。今の刑事もののように、裏の人間関係あったり、事件に別の意図があったりなど、話が複雑になる要素はない。ストレートな進行のもとに、関係する人物を入念に描写するというスタイルは、後の「天国と地獄」に引き継がれる手法だ。

現役時代の川上哲治選手の試合が挿入されていて興味深い。今の野球と比べるとスローモーションに見えてしまう。

黒澤明監督と三船敏郎の若い頃の勢いを感じる映画だ。