映画「ザ・マジックアワー」(2008)の感想。三谷幸喜監督のコメディー作品。

三谷幸喜脚本・監督のコメディー。佐藤浩市、妻夫木聡出演。

ギャングのボスの愛人に手を出した手下のホテル支配人。伝説の殺し屋を連れてこなければ命がない。しかし、その殺し屋が見つからない。そこで、窮余の策として無名の俳優を雇い、殺し屋に仕立て上げてしまう。

マジックアワーとは、日没しているのに、残光によりほんのわずかの時間だけ照らされる最も美しい時間帯のこと。この映画では、この美しい境界が、現実と演劇の境界と、俳優業を止めるか続けるかの境界として描かれる。

もともと演じるというものは、現実世界から見れば不思議な行為。見る側からは、何をやっているんだと思えるバカバカしさがあって、笑える要素を含んでいるものだ。それを利用して、お笑いコントなどでは、なりすましのネタがよく使われる。

この映画では状況設定がうまい。セピア色が似合う街並みにギャングや殺し屋が登場するというかなり非現実的な設定。そこにギャングになりきった俳優が登場することで、二重に現実離れした構造になっている。そのため、現実感の無さが際立って、ますます笑いをさそってくれる。

映画と役者稼業の持つ面白さを最大限に引き出したコメディー作品。三谷映画の中でも、とくに笑える作品だと思う。