韓国映画「KCIA 南山の部長たち」(2020)の感想。朴正煕大統領暗殺事件。

イ・ビョンホン主演。朴正熙大統領暗殺事件をもとにしたフィクション映画。

1979年の朴正煕大統領暗殺は、宴会中にKCIA部長が大統領と警護室長を射殺した事件。この映画ではイ・ビョンホンがKCIA部長を演じる。苦悩の末に暗殺事件に至るまでの葛藤を好演している。

当時のKCIAは、泣く子も黙るKCIAと言われたくらいに絶大な国家権力を持っていた情報機関だ。この映画で主人公は、強面の権力者ではなく、大統領側近としての悲哀を持つ人物として描かれる。殺人も可能なくらいの地位にいても、大統領の真意をおもんばかるときには小心者の顔つきだ。追い込まれた末に無計画のクーデターを起こし、破滅への道をたどる結末は、権力の裏の恐さを感じさせる。

映像もいい。青瓦台内部での側近政治の寒々しさが、暗く冷たい画面からよく伝わってくる。イ・ビョンホンもいいが、朴大統領役のイ・ソンミンの孤独感漂う表情も秀逸。周りの人間にとってこの顔は怖い。

独裁者に側近政治はつきものだが、その怖さと危うさを見事に描いている。