映画「暗殺の森」(1970)の感想。ベルナルド・ベルトルッチ監督作品。

1970年公開のベルナルド・ベルトルッチ監督の初期の作品。

時代は第二次世界大戦中のイタリア。主人公はファシスト政権下で秘密警察の一員となっている哲学講師。彼には子供時代に同性愛者の青年に襲われ、誤射で殺害してしまった過去がある。

成人になると同性愛者となっているが、過去がトラウマになり人と同じような振る舞いができないことに悩む。人と同じように生きたいという思いから、中流家庭の女性を妻にする。しかし、一方には愛人である盲目の男がいる。

結婚後もすぐに恩師の妻とも関係を持ってしまう。最後は、組織からの指示で恩師夫妻を殺害してしまう。さしたる定見も持たずに、時流に流された男の哀しい末路が描かれる。

人は誰でも孤独を感じるときがある。そういうときには、他人と同じようなことをしたいと思うが、そこに落とし穴があり、見事にハマったのが主人公だ。人と同じようなことをして普通でありたいという欲求は、ときには危険であることが体現されている。全体主義への批判であり、そこに図らずも入ってしまった人たちへの警告でもある。

主人公のジャン=ルイ・トランティニャンは強面の役柄が多いが、ここでは煮え切らない小心者を演じている。これもなかなかいい。