プロ野球の新人獲得競争を題材にした作品。佐田啓二主演。
昭和31年公開なので、長嶋茂雄入団以前になる。もちろんドラフト会議はまだない。各球団とも有力新人を獲得すべく、契約金をつり上げて激しい競争を繰り広げた時代。
主演の佐田啓二は球団の敏腕カウト。これがなかなかいい。札束が舞うような最前線で激しい競争をしながら、これでいいのかと自問自答して苦悩する。
球団側が金銭で攻勢をかけると、足下を見た相手側の取り巻きも欲得にまみれた要求をしてくる。欲と欲とのぶつかり合いのような荒んだ状況。そこで揺れ動く主人公の心理。しかし決して正義感だけを振りかざすわけではない。スカウトのプロとしての自負もある。どうにか人間どうしの信頼関係に光を見いだそうとする。
あまり期待しないで観たが、予想以上に面白かった。巧みな構成の作品だ。