映画「スオミの話をしよう」(2024)の感想。三谷幸喜脚本監督、長澤まさみ主演。

三谷幸喜脚本監督、長澤まさみ主演のミステリーコメディ。封切り初日の夕方の上映回で鑑賞。観客は25人ほど。

流行詩人の若妻スオミが行方不明になる。邸宅には詩人と元夫の計5人が集合する。誘拐の疑いが濃くなる中、5人のもとでのスオミの様々な顔があぶり出されていく。そして犯人からの身代金の要求が届く。

冒頭からの5人の夫たちとスオミとの関係の紹介は、メリハリがなくてやや冗長ぎみ。ドタバタ劇でありながら締まった流れをみせるいつもの三谷作品ではない。セリフまわしも切れがなく、笑えるシーンが少ない。やはり5人は多すぎる。3人くらいがよかったのではないか。

誘拐犯からの連絡から身代金の受け渡しは、刑事コロンボ「死者の身代金」のプロットをそのまま持ってきている。これを知っていると、その後の展開もある程度わかってしまう。

長澤まさみの演技力はさすが。5つの顔に素のスオミ、それに中学時代のスオミと母親の8つの顔を演じ分けている。ただ、さすがにこれは多すぎる。総花的に並べてあるので各キャラの存在感が薄くなる。更に、肝心の素のスオミにこれといった特徴がない。これも3つくらいにして、もっとつくりこんだ方がよかったのではないか。最後の公開尋問は、さすがに脚本的にやり過ぎだと思う。

スオミはフィンランド語でフィンランドのこと。スオミは二つの名のうちの一つであり、男たちは一面からでしか妻を見ていないの例え。その中心である首都ヘルシンキはフィンランド語でも同じヘルシンキ。スオミはそのままの自分の心を見て欲しいという願いから、ヘルシンキが好きだと言ったのだろう。

三谷作品の特徴は、多くの人物を駒として入れかわり立ちかわり登場させ、そのテンポがよいことにある。この作品は、長澤まさみの演技力を前面に押し出しすぎて、駒として使えなくなっている。名脚本家と名女優のコラボは、必ずしもうまくいくものではないんだと思わせる作品になってしまった。