道上尚史著「韓国の変化 日本の選択」書評感想

著者は現役の外交官。12年に及ぶ韓国勤務を経験した外務省きっての韓国通。

外交官としての著者の苦労がしのばれる経験談だ。駄々っ子のように一方的な主張を繰り広げる韓国。一方では、日本に学ぶべき点を真摯に見つめ良好な関係をつくるのが必須と考える韓国。筆者は外交の最前線でそのどちらにも対峙してきた。

売り言葉に買い言葉のような子供の喧嘩になってはならない。大人の対応をとるべきなのはわかってはいる。しかし、そこが難しい。日韓関係は、国民のあいだでは既に感情の問題になってしまっている。

著者が関係した40年の間に両国の立ち位置は大きく変わっている。韓国の発展は目を見はるものがある一方で、日本の国力の低下は否めない。IT、エンタメの分野では完全に後れを取ってしまったが、既に行政システムまでそうなっているという話には少し驚いた。

韓国との関係を考えるうえで、今の日本の世界の中でのポジションに目を向けざるを得ない。もう見下ろすような立場から韓国とつきあう時代ではなくなったし、よい関係を築こうとすればするほど、どうしてもそこに思い至る。日本人のメンタリティとしてはつらいだろうが、現実を直視するしかないだろう。