ラテン語についての四方山話。
語学ファンにとっても、ラテン語は特異な存在だ。あのローマ帝国で話されていた言葉であるし、フランス語、スペイン語、イタリア語などを学べば、先祖にあたるラテン語の影を感じないわけにはいかない。それほど遠くにある存在ではないことは確かだ。しかし現実世界では既に死語になっているし、複雑な文法のため学び始めるのには少し敷居が高い。もっぱら教養のために学ぶ言葉という印象が強い。
本書では現在でも目にするラテン語を次々に挙げ、その解説が述べられている。単なる語源たどりではなく、その先にある西洋文明にまでつながる説明の奥深さには驚いてしまうし、それがなかなか興味深い。政治、宗教、科学、芸術と、あらゆる分野にわたっていて、題名にうそ偽りなしということがわかる。語学を離れて西洋文明の一端をめぐる旅をしているような気分にもなってくる。
外国語学習はただの暗号解読ではなく、その背景の人たちの文化や風習を学ぶことだとよく言われる。それが最もふさわしいのがこのラテン語かもしれない。本書は、初心者向けにラテン語学習が西洋の文化遺産につながる道にもなっていること示している良書だと思う。