韓国映画「JSA」(2000)の感想。豪華キャストでイ・ビョンホンがよい。

38度線上の共同警備区域(JSA)で起こった射殺事件。中立国スイスから派遣された女性将校が真相の究明にあたる。朝鮮半島の分断の最前線で起きた悲劇を、ミステリアスタッチで描いた作品。監督は、「オールド・ボーイ」、「親切なクムジャさん」のパク・チャヌク。

韓流ブームが始まった頃、話題作「シュリ」の次にやって来た韓国映画で、当時もかなり評判になった。今では大物俳優となったイ・ビョンホン、ソン・ガンホ、イ・ヨンエの3人が出演している豪華キャスト。

38度線をはさんで近くて遠い国になっている韓国と北朝鮮の抱える問題。人情的にはどれほど親しい関係であっても、現実は戦時下の休戦状態。その維持に第3国が入ってきてしまっており、一筋縄では解決しない状況が続いている。

4人は1日でも早く除隊したい徴兵軍人。交流ができれば親しくなるのはふつうのこと。しかし政治状況が優先される緊張状態下では、些細な出来事であっても暴発の引き金になってしまう怖さがある。その怖さと事件の真相を探る謎解きが同時に進行していくテンポのよいストーリー。

とくにイ・ビョンホンがよい。「王になった男」では素晴らしい演技を見せたが、この頃もすでに演技派の力量を十分に発揮している。

ソン・ガンホは相変わらずおじさんくさい雰囲気を漂わせている。

イ・ヨンエの役どころは、中立国スイスの立場と、出自が北朝鮮であるという複雑な状況をかかえこんだ将校。残念ながら美人女優としての枠内にいるようにしか見えないな。第3者的な冷たさと個人的事情との心理的葛藤が、もう少し表現できていればよかったと思う。

謎解きをうまくストーリーに組み込んで、政治的状況に翻弄される朝鮮半島の状況を表現した優れたエンターテインメント作品。