韓国映画「ハルビン」(2025)の感想。

伊藤博文を暗殺した安重根らの独立運動を描いた歴史サスペンス映画。

主に描かれるのは独立運動組織の内部の動き。日本軍の弾圧をかいくぐり、暗殺計画を実行に移していく。その過程で、安重根への批判や仲間内の裏切りが組織に微妙な亀裂生んでいく。ただ、ちょっと引いた目線で淡々と描写しているという感じが強い。伊藤博文暗殺までのカウントダウンも表示されるが、そのわりには緊迫感が薄く盛り上がりに欠ける。

主人公の安重根は更に引いた目線で描かれる。日本の少佐への慈悲が組織の不協和音を生んだという場面からは、ヒューマニズム的な人物のようでもある。しかし、暗殺を決意するまでの内面の葛藤を示すようなシーンはなく、内に秘めた思いを遠くから眺めるような撮り方のみだ。結果として、思想がよくわからない人物になってしまっている。

日本軍も必要以上には無慈悲な面を強調はしていない。弾圧や拷問のシーンもあるが、とくに批判めいたところも感じられない。

映像やセットは韓国映画らしくよくできていて、植民地時代の暗い状況をうまく伝えている。それだけに、もう少し脚本的なめりはりがあればと思ってしまう。