井上章一著「プロレスまみれ」書評感想

NHKの歴史番組でよく見かける著者。歴史の先生がこんな濃い趣味をお持ちであったとは思わなかった。書名どおりのプロレスまみれ。プロレス愛に満ちた本。

冒頭からNHKの善人ブッチャーという取り上げ方に異議を唱え、最後の国会答弁での田舎のプロレス発言にかみつくまで、プロレスを見下す風潮に抗うように、激しいプロレス愛が語られる。

学者としての分析力を垣間見ることができる部分もあるが、邪推と認めたうえでの糾弾はクイズダービーの篠沢教授にも及ぶなど、ノリノリのペースで筆は進む。

太陽にほえろ、全員集合などのタイトルがあるので、そちらの話にいくのかと思えば、プロレスのテレビ枠の裏話。力道山、ルー・テーズ、馬場、猪木、ホーガンなど名レスラーの裏話は興味深い。

世の中のプロレスの扱い方に大いに不満のある著者。それを吹き飛ばすようなプロレスへの思い入れ。居酒屋で熱く語るおじさんの話を聞いているようだ。だからこの本は面白い。