
著者の直木賞受賞作。20世紀前半の満州が舞台。
当時の満州は、日中露の3カ国がしのぎを削るホットスポット。登場人物も多く、それぞれが我が道を突き通そうとして衝突したり手を組んだりと、様々な人間模様が展開する。半世紀に及ぶ絵巻物のような物語だ。
満州を建国する日本にとって、地図とは統治の第一段階。単なる領土占領だけでなく、そこには将来の計画を織り込む。軍人はその達成のために容赦なく突き進む。その力を象徴したのが拳だ。一方、建築家は建物を通じたユートピアづくりを目指す。これはより現地に寄り添った考え方だ。だが、そこに住む人たちにとって、いずれも災難でしかない。否が応でも彼らも拳にうったえることになり、戦いの連続になる。
ドストエフスキーの小説を読んでいるとロシアの大地という言葉が出てくる。そこには、土地が彼ら自身の根源であるかのような思いが込められている。序盤に細川がロシアの建物の背後にある思想を読み解く場面が描かれる。そういったロシア人であるからこそ、他人の土地を奪うことの難しさを熟知しており、建てるからには断固とした思想を組み入れるのである。日本にはそのような覚悟があるのかと考えさせられるシーンだ。
歴史物語というだけでなく、エンタメとしても完成度の高い作品。おすすめ。

















