鳥飼玖美子著「通訳者たちの見た戦後史」の感想。

同時通訳として活躍し、その後英語教育者に転身してからもテレビなどでお馴染みの著者。自身の体験を交えて、通訳者から見た戦後史を語っている。

英語との出会いとその後の修業時代の苦労話。若い頃から怖いもの知らずの行動力で第一線の通訳の場に出る。教育現場に移ってからも挑戦が続く。子育てをしながら大学院に入学するなど、パワフルさには驚く。

そして国広、西山、村松と言った著名な通訳者のエピソードも興味深い。とくに国広氏とのやりとりは、考えさせられる。華やかな世界のように見えるが、神経をすり減らすような激務である通訳。高い技能を持ちながら、社会的に相応の待遇を受けていないのではと思ってしまう。

アポロ月面着陸、大阪万博、沖縄返還など、戦後の節目になるイベントには必ず通訳者がいる。まさに歴史の目撃者だ。ときには国際的な交渉を左右するような重い役割だ。端から見れば、著者は英語を軸にして充実した人生を送っているように見える。ご本人の頑張りがあってこそだと思うが、読む人に勇気を与えてくれるような本だと思う。