松本清張原作、野村芳太郎監督。丹波哲郎、加藤剛、森田健作出演。言わずと知れた松本清張原作の傑作映画。一説には原作を超えたとも言われる作品。
さすがによく出来ている。前半から中盤にかけては、丹波哲郎、森田健作コンビの執念の捜査。亀田というキーワードをもとに、細い糸をたぐり寄せるようにわずかな手がかりから真相に迫っていく。最初の亀田行きが失敗に終わったときの、丹波哲郎、森田健作の無力感の表情もいい。ここでの盛り上げ方はさすがだ。
そして終盤からは放浪を余儀なくされた父子の姿。とくに父親と離れ離れになる子供の悲哀と親子の情。それに伴う音楽が哀愁を帯びてぴったりだ。敢えて言えば、終盤の父子の放浪は少し長過ぎかな。しかしここで情緒に訴える映像と音楽があるので、完成度が上がっているの確かだが。
ミステリーとしては、突発的な犯行なので、パズルを解くような謎解きではない。徐々に明らかになる真相とその重さ。社会的弱者に対する世の中の仕打ち。うまくストーリーが展開していく。