プロ野球を舞台にした珍しいミステリー。
後楽園球場でのプロ野球の試合中、登板中のピッチャーが突如降板を申し入れ球場から姿を消した。その夜、実業家が絞殺され、現場でそのピッチャーのシガレットケースが見つかる。偶々依頼人との関係で巻き込まれた百谷泉一郎・明子夫妻が捜査に乗り出すと、野球賭博とのつながりがわかってくる。
冒頭から謎の失踪をするプロ野球投手というぞくぞくするようなシーンで始まる。裏に何があるのかと読み進めると、野球賭博とのつながりが明らかになってくる。だが、野球との関わりはこのくらいまでで、それからはごく普通に殺人事件の捜査に焦点が移ってしまう。
野球界に配慮して野球賭博について深く突っ込まないのかなと思ったが、黒い霧事件のだいぶ前の昭和37年の作品。解説にあるように、著者が野球に詳しくないせいなのだろう。
殺人事件は、ごく普通に百谷泉一郎が活躍して解決する。オシドリ探偵としてはいいコンビだし、普通に面白いミステリーだと思う。