韓国映画「ソウルの春」(2023)の感想。

韓国で1979年に起きた軍事クーデターを題材にした作品。

独裁体制をしいた朴正煕大統領が暗殺されると、短いあいだではあったが権力の真空状態が生じた期間があった。その間隙を縫って登場したのが次の独裁者全斗煥大統領だ。彼がどのように政権を奪取したかがこの映画で描かれている。

陸軍内にハナ会という自分の息のかかったものでつくる組織をつくり、そのメンバーを率いてクーデターにより軍の実権を握ろうとしたのがこの事件だ。軍の要所に子分たちを配置して万全の体制を敷いたかに見えたが、思惑通りには事は進まない。参謀総長逮捕の大統領裁可は降りず、首都警備司令官に攻め込まれ、一進一退の情勢になる。負ければ反乱軍として討伐される。まさに薄氷を踏む思いの攻防戦だ。

全斗煥は狡猾な人物として描かれている。親分肌で統率力があるが、権力欲にとりつかれた人物。対する首都警備司令官は、愛国精神に満ちた高潔な人。この二人が正面から衝突する。これがど迫力の映像で、手に汗握る緊迫の攻防が見どころだ。

結果的には全斗煥が勝って大統領となり、軍事政権が成立し民主化が遅れることになる。

ヒット作だけあって傑作といってもよいくらいに隙がない。さすがに韓国映画と思わせてくれるおすすめの作品。