著者はテレビなどでもお馴染みの脳科学者。脳科学的な立場で、お悩み相談などに明快に答えている姿が思い浮かぶが、この本はちょっとテイストが違っている。
自分のこれまでの半生を振り返る自叙伝に近い内容。それがタイトルのように仮面の告白形式になっている。脳に潜む闇とまではいかないが、外の世界との折り合いに苦しむ著者の本音が綴られている。
自分の持つ才能ゆえに、周りにうまく合わせられなかった子供時代、両親の不和、女性研究者としての感じる差別など。鋭敏過ぎる頭脳の持ち主であるため感じる葛藤。
才能があること、いわゆる頭が良いことは普通は肯定的にとらえがちだが、果たしてそれが幸せかどうかは、改めて別問題だと思わせてくれる。
愚痴ととれるようなところもないわけではないが、学者が自分の個人的な苦しみを素直に書いた著作を公開するのは、やはり勇気のいることだと思う。
脳科学的な分析というよりも、才能ある人間の感じる生き方への悩みや苦しみを綴ったよい本だと思う。