佐藤優著「プラハの憂鬱」の書評感想

著者は、外務省に入省したときの経緯をいろんな著作に書いている。チェコ語での研修を希望したが、ロシア語研修となってロシアの専門家になってしまったことなど。本書は、ロシア語研修を受けたイギリスでの出来事で、チェコとの関わりが詳しく語られている。

ロンドンの亡命チェコ人の古本店店主との出会いは、スパイ小説の冒頭かと思えるくらいのゾクゾク感がある。その後、店主との対話は、チェコに関する歴史、思想、哲学などの分野に及ぶ。もちろん神学についての記述はちんぷんかんぷんでスルーだが、チェコ人の思考パターンなど興味深い記述が多い。

そして登場人物の発言を通して、国際情勢の解説をしてしまうという得意の手法。イギリスから見たときの、アイルランドの生の解説も面白い。

著者は、国際情勢、哲学、歴史、思想、処世術、学習法など、いろんな分野の本を出しているが、本書のように外交官時代の知見をもとにした、国際関係論のようなものが一番面白いと思う。