ノーベル化学賞の受賞者でもあるドイツの化学者フリッツ・ハーバーの一生。
研究者として前半生では、空気中の窒素からアンモニアを合成することに成功する。この発明により、化学肥料を合成することができるようになり、農産物生産量の飛躍的な増加につながった。今日の社会が食糧危機を回避できたのは、この業績によっている。しかし、後半生では、愛国心から毒ガスの開発に従事することになり、第一次世界大戦で自ら毒ガス作戦の指揮をした。妻の抗議の自殺やアインシュタインの忠告にもかかわらず、その後も毒ガス研究を続ける。
科学の持つ光と影の両面をひとりで背負い込んだような研究人生。数々の業績をあげたことから、研究者としての才能や努力が並々ならぬものがあったのだろうと想像できる。もちろん名声も得ているし、現在でも彼に名前を冠した研究所があるくらいだ。だが、家庭生活での妻の自殺、自身がユダヤ人であることで晩年にナチ政権の弾圧を受けるようになり、不遇の最期をむかえた。
科学の軍事利用についてどういう立場をとるかは、科学者にとってなかなか難しい問題。ハーバーの場合、愛国心から極端なところまで行ってしまった。
NHKBSプレミアム
フランケンシュタインの誘惑
「愛と憎しみの錬金術 毒ガス」
2020年9月24日 21:00-22:00
(初回放送2015年7月2日 22:00-23:00)