映画「カンバセーション…盗聴…」(1974)の感想。コッポラ監督作品。

1974年製作。フランシス・フォード・コッポラ監督作品。

タイトルと冒頭シーンから、サスペンス事件ものだと思って観ていたが、いっこうに話が進展しない。ひたすら主人公のジーン・ハックマンの行動をとらえているだけだ。

ハックマンが演じるのはプロの盗聴屋。西海岸随一の腕を持つプロフェッショナルであり、一方ではあつい信仰心も持っている。自分の仕事に対しては自負もあるが、裏家業であるという思いが心理的な負い目になっている。

録音のみが仕事であり、対象には深入りしない求道者のようなスタイルは、同業者たちとは相容れない。同僚にも秘密主義を貫いている。愛人にも素性を明かさない。

一言でいうと、仕事はできるがめんどうくさい人物だ。そういう人物を全編で描くのだから、作品づくりには腕が要る。

大がかりな仕掛けはないし、アッと言う事件も起きない。主人公の日常業務が淡々と描かれるだけ。そこに忸怩たる思いで生きる盗聴屋の不安定な心持ちが表現されている。それが盗聴そのものについて問題提起になっている。

コッポラ監督がつくりたい映画をつくったという作品。エンターテインメント性は薄いが、パルム・ドールにはふさわしい。