映画「ある殺し屋」(1967)の感想。市川雷蔵主演。おすすめの雷蔵作品。

市川雷蔵主演。藤原審爾の「前夜」が原作。

市川雷蔵演じる小料理屋の主人は、実は腕の立つプロの殺し屋だった。暴力団の組長から対立する組長の暗殺を依頼され、見事な手順で成功させる。更に、組の幹部から2億円の大仕事を持ち込まれ、周到な準備で計画を進める。

お金をかけていないセット。お金のかかっていないロケ地。突貫工事で安っぽいドラマをつくったような撮影現場だ。それなのに終始グッと惹きつけるような魅力を感じさせる。

ほとんどの場面が、市川雷蔵、野川由美子、成田三樹夫、小池朝雄で繰り広げられる。終始ニヒルでミステリアスな雷蔵の存在感。お調子者の小娘役の野川由美子と小物感あふれる成田三樹夫が雷蔵を引き立てる。そして悪党親分の小池朝雄。この4人の芝居だけでも、作品に骨太の安定感を与えている。

脚本もうまい。回想シーンと計画前日の様子が交錯して、間のびさせない。殺し屋の過去は、戦争中の写真で想像させるだけで、それ以上の説明はない。なにか影を感じさせるうまい構成。

市川雷蔵作品の中でも、この映画はとくによいと思う。おすすめ。