映画「時計じかけのオレンジ」(1971)の感想。キューブリック監督。

スタンリー・キューブリック監督によるSF映画。1971年公開。

とにかく過激でエキセントリックな作品。欲望のままに犯罪を重ねる不良少年が主人公。悪行の末に逮捕されると政府が推奨する新たな治療法の実験台となる。強制的に暴力的映像を見せることで嫌悪感を精神に植え付け、暴力に対する生理的拒絶反応を引き出すというもの。それにより犯罪を撲滅するのが目的だ。

本来、誰でも悪行を行いたいという気持ちは多少なりともあるもの。それを外部から強制的に封じ込めることは、人格の否定にもつながるだろう。治療を受けた後に、自宅に戻ると自分の居場所がなくなっていたのは、本来の自分ではなくなってしまったことの暗示だ。

そういう非人道的なことが、犯罪撲滅のような世間受けしそうなキャンペーンのもとに行われる。人道的な立場からの治療であればまだしも、政争の道具として行われる。権力による人格改造と言える。

人格の向上という題目は、崇高な意思として道徳的にも社会的にも認められやすい。しかしそこに他者の思惑が入ると、かなり危険な状況を誘発する危険性があるということを示している。

悪い個性もその人の人格。そこに他人や権力が介入したときの怖さを過激に描いている。キューブリック監督らしい作品だと思う。