映画「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」(1972)感想。

1972年公開のフランスのコメディ映画。アカデミー外国語映画賞を受賞。

ブルジョワ階級の日常が淡々と描かれる。彼らは外国の大使と日常的な親交があるくらいの特権階級。互いの交流はそつなくこなして、日々の社交に余念がない。ただ、それは偽善に満ちた表面上のつきあいで、裏では麻薬取引をしたり、不倫関係を持ったりしている。倫理的にもプライベートでも、社会的ステータスに見合ったことをしていないし、何より生産的なことを何もしていない。

そういう状況のもとでも、仲間と美食を楽しむというルーティーンは欠かせない。近くで軍隊が演習をしているような場合でもだ。軍人とよしみを通じるには長けていて、取り繕った社交性がこういうときには生きる。ただ、なかなか食事にありつけなくとも、どうにかしようという向上心はない。とにかく前例にしたがって贅沢をするのみだ。

彼らは一本道を連なって前に進もうとしている。その原動力は、特権階級の利権を行使することだけだ。彼らに牛耳られている社会は、ただ不毛の地を前進しているだけで救いがない。

ブルジョワ階級の負の面を揶揄したシニカルな作品だ。