韓国映画「豚が井戸に落ちた日」(1996)の感想。ホン・サンス監督。

ホン・サンス監督のデビュー作。ソウルで生きる4人の男女の生活を描いた作品。

4人の男女の日々の生活がオムニバス形式で淡々と描かれる。彼らにはそれぞれつながりがあって徐々に関係がわかってくるのだが、そこに重点を置かない。何をしてどのように毎日を送っているのかが画面に現れるだけだ。

ふつうの映画だと出さなくてもいいような場面も多々あって、粘着質的に追いかけているといった印象を受ける。だが、人の日常というのはこんなものだろう。取るに足らないことの積み重ねが日々の生活だ。

4人は、夫婦、恋人、不倫相手などの関係であるが、相手とのコミュニケーションがうまくとれていない。自分の一方的な考えでのみ成り立つ関係なので、終盤にかけて軋轢が起きてくる。そしてついに殺人事件が発生することになる。だが、そのあたりの詳しい説明は一切ない。日常の一コマとして処理されるだけだ。

都会の殺伐とした面を、単調な日々の生活と人間関係の希薄さで表現した作品。90年代の韓国の雰囲も知ることができる。ソン・ガンホのデビュー作でもあり、冒頭に若い顔で登場している。