韓国映画「マルモイ ことばあつめ」(2019)の感想。

日本統治下の朝鮮半島で、朝鮮語の辞書作りに心血を注いだ人たちの物語。

日本の官憲に弾圧にもめげずに、母国語を守ために辞書を作り上げたストーリーが軸になっている。そこに学会の若い代表ユン・ゲサンと非識字者のユ・ヘジンの対照的な二人の関係を持ち込んだのがうまい。代表は辞書を作ろうという使命感に燃えるあまり、少し上滑りしているようなところがある。当時は字を読めない人も多いだろし、そういう人が母国語の大切さと言われてもピンとこないだろう。それを代弁するような字が読めないユ・ヘジンが行きがかりでグループに加わる。二人は衝突を繰り返すが、徐々に和解をしていくことになる。その過程が家族まで含めての人情劇になっている。

後半は、追いつめる当局と学会員たちによる手に汗握る逃走劇だ。警察追っ手は容赦ないし、命を張って辞書を守ろうとする彼らの姿は感動を呼ぶし、ヒッチコック作品のようなスリリングさもある。

公聴会で標準語を定めるシーンがあるが、この時代にまだ確かな標準朝鮮語が決まっていなかったことを初めて知った。国家が安定しなければ、標準語化の推進もできないのだろう。

なかなかの力作でよくできている作品だと思う。