加藤周一による若い時代の回想録。
読もう読もうと思いながら長い間本棚で眠っていた本。有名な本だし、飾っておくにももってこいの本なので、本棚の主のように置かれて手つかずの状態になっていた。
著者の生まれが1919年であり、昭和初期から戦前、戦中、戦後の体験が綴られている。平均的という言葉を使っていても、著者が昭和の突出した知識人であることは間違いないし、生活レベルも庶民のそれではない。そういうバックグラウンドの著者がそのとき何を考え感じていたのかを知るのは興味深いし、どうやって加藤周一ができてきたのかを知るうえでも貴重な回想録だ。
根本的には戦争への嫌悪があるわけだが、医師としての勤務をしながらの時代の中にありときの戦争への見方や、国際経験がまだない時期の考え方を知るうえでも貴重だ。