江利川春雄著「英語と明治維新」の感想。

幕末から明治初期の日本の外国語への対応についての詳細な記録。

明治維新といえば、大きな内戦にも発展しないで大変革を成し遂げたという歴史上でも希有な出来事だと思う。徳川幕府の崩壊のみならず、武士社会の終焉を穏やかにおさめた当時の指導者たちの働きは、振り返ってみても賞賛に値するものだ。

この時代は体制の変革だけでなく、外国語についての対応についても、大きな変革の時代でもあった。そして幕府と明治政府はそれをかなりうまくやり遂げた。

幕末には既に蘭学から始まるオランダ語の時代は終わりを告げ、英語への転換期にさしかかっていた。もちろん当時は今のように英語一強ではない。フランス語、ドイツ語、ロシア語などが、それぞれの分野に浸透していく。手本とすべきはどの国かという観点で主力となる外国語は選ばれているが、世界的潮流である大英帝国の時代というところはしっかりと押さえてある。

こういう流れを見ていると、今の英語イコール国際語という考えは絶対的なものでないことがわかる。冷戦期には日本人もロシア語を習っていた可能性もあったのだし。そういう意味では、これからは中国語の力を無視できないようになるだろうし、どうするかを考えなければならない時期にさしかかっていると言えるだろう。