初版が1972年なのでかなり前の本になる。大分以前から気になっていたが読む機会がなく、ようやく手にとってみた。
日銀マンの著者が1965年から1971年まで、ルアンダ銀行総裁として赴任していたときの記録になる。中身が濃くて読み応えたっぷり。何故、版を重ねて今に至るまで読み継がれているのかがわかった。
世界銀行から派遣されて単身赴任してはみたものの、当時のルアンダは独立後間もない。とても国家の体を成していない状況。中央銀行とは言っても、田舎の営業出張所くらいの規模で、わずかな職員により運営されている零細機関だ。
独立は達成してが、現地の欧米人たちの利益優先で、あちこちで国の富が巻き上げられているシステムが依然として動いている。その根幹にはルアンダ人には国家運営は無理という考えがあり、それが欧米人だけでなく現地の人にも深く浸透してしまっている。
著者は総裁として金融の問題点を洗い出し、抜本的な改善に乗り出す。悪戦苦闘の日々だ。基本的な考えはルワンダ人の自立。少しずつだが効果が出てくる。任期末までこれが続く。
まさに昭和のサムライの奮戦記と言える。プロジェクトXにすれば間違いなく大作になるだろう。見方によっては痛快な活躍劇となるかもしれないが、一方でルアンダの当時の状況が克明に描かれている点も見逃せない。未開の大陸アフリカなどと言うが、実際に独立当時どうだったのかがわかる内容だ。その後ルアンダでは部族間対立により大虐殺が発生する。今のアフリカを見ても、政治、宗教、部族の対立とそれに伴うテロがあちこちで見られる。発展途上の国でこれは致命的だ。
アフリカの本当の姿を知るうえで貴重な記録。おすすめ。