岡田恵美子著「言葉の国イランと私」書評感想。ペルシャ文学者の留学体験記。

著者はペルシャ文学者で日本イラン文化交流協会会長。東京外国語大名誉教授。東京オリンピックの頃にイランへの国費留学生第一号としてテヘラン大に留学して博士号を取得。そのときの留学体験記などをつづったエッセイ集。

中学の教師をしていて、あるきっかけでペルシャに興味を持った著者。国王に直接手紙を書いて留学を実現させてしまった行動力には驚く。現地の生活ではそれなりの苦労はあったと思うが、著者の前向きが性格のせいか、そのような記述はあまりみられず、楽しい読み物になっている。国費留学が決まったとたん、外務省の対応が変わったというのは笑える話だ。

イランといえば最近はアメリカの経済制裁で、ニュースからは敵役としてのイメージが強い。著者が留学した時代はイスラム革命よりもかなり前の王政時代。今とは状況が違ったと思うが、当時のイランでの生活についてのトピックスは、ユーモアにもあふれ読んでいて楽しい。イスラム圏であっても、アラブの国々とは違った文化を持つイランを知るうえでよい本。