著者は朝日新聞記者で元ソウル支局長。
タイトルのとおりにユン・ソンニョル大統領の戒厳令宣布の背景とその後混乱に陥った韓国についてのレポート。新聞記者らしく詳細な取材をもとにした事件の分析は読み応えがある。ユン大統領の人となりから、戒厳令にまで至った彼の持つ権力基盤の解説もわかりやすい。そして機能しなかった軍について、ソウルの春との比較もある。
後半は、歴代大統領の足跡、それに現代の韓国社会の分析。学者的な見方ではなく、一次取材をもとにした論評。歴代大統領どうしの関係についての記述はなかなか面白い。朴正煕と全斗煥の互いの見方、盧武鉉が文在寅をどう見ていたのかなど興味深い。大統領とはいってもどんな人物なのかとう問いかけのヒントにもなり、新聞記者としての取材力を感じさせる内容だ。最終章では北朝鮮、アメリカ、日本との関係についての最新の分析もあり、新聞記事以上に濃い内容だ。
ホットな韓国の話題をわかりやすく説明した解説本。おすすめ。